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徹底解説!商社・卸の業務と商品流通の仕組み
本記事では、商社の主な業務内容と、商品がメーカーからエンドユーザーに届くまでの流通構造について詳しく解説します。
1. 商社・卸の主な業務:ルート営業が中心
商社・卸の業務(主に営業)は、そのほとんどがルート営業で成り立っています。
ルート営業とは?
すでに取引があり、継続的に商品(物販)を購入している既存の顧客に対して営業活動を行うことです。
主な顧客の種類
商社がルート営業を行う主な顧客は、多岐にわたります。
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仲間卸
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同業の卸売業者同士で商品の融通を行う取引です。お互いが取り扱っていないメーカーの商品を仕入れ合うなど、在庫の相互補完的な役割を持つことが多いです。取引先の半分以上を占める商社もあります。
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販売店
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文字通り、商品を販売している小売店や専門店です。ホームセンター(コーナン、カインズ、ビバホームなど)もこれにあたります。
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B2C(消費者向け)にせよ、B2B(企業向け)にせよ、最終使用者(エンドユーザー)に売るところが販売店です。街中にある、特定のメーカー(例:マキタ、ハイコーキ)の看板を掲げた専門店なども含まれます。
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工場
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メーカー
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商社でありながら、逆にメーカーに対して商品を納品するケースもあります。
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これらの既存顧客に対し、新入社員や中途入社者が担当エリアや店舗を割り振られ、定期的に訪問して商談を行うのが商社のメイン業務となります。
2. 商品流通の仕組みと代理店の役割
商品が川上から川下へと流れる「流通構造」は、業界によって特徴があります。
一般的な流通構造(川上から川下へ)
メーカー -> 商社・卸 -> 販売店 -> エンドユーザー
代理店とは?
流通構造において「代理店」は、メーカーとの関係において重要な役割を持ちます。
代理店の定義
メーカーが正式に認証し、「うちの商品を売ってきてください」と依頼している商社のことです。つまり、メーカーの商品を取り扱う権利を公式に認められた一次卸業者であることが多いです。
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地域分担:代理店は、担当するエリア(商圏)ごとに分けられているケースが多いです。
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商圏の重複:歴史的経緯や商社の事業拡大(支店開設など)により、意図せず同じ地域で複数の代理店が存在し、商圏が重複する(競合する)ケースもあります。
仲間卸の仕組み
前述の「仲間卸」は、流通構造でいうと卸商社同士の横のつながりを指します。
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メーカーの取り扱い:卸商社AがメーカーA・B・Cを取り扱い、卸商社BがメーカーC・D・Eを取り扱っている場合など、それぞれが取り扱いがないメーカーを持っていることがあります。
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間接的な仕入れ:販売店が特定のメーカーの商品を取り扱いたいと思っても、メーカーやその代理店(一次卸)が取引口座を開設してくれない場合があります。これは、最低発注数が多いことや、取引量が少ない顧客とは取引したくないといった理由からです。
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この場合、販売店は取引しやすい横の卸商社(仲間卸)から商品を購入せざるを得ません。この横の取引は、構造上は二次卸と同じ形になります。
流通構造における利益・利幅の仕組み
商品が流通する過程では、各段階で利益が上乗せされます。
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卸商社の利幅:かつては10%〜15%程度でしたが、現在では平均15%〜20%程度が一般的です。
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販売価格の上限:最終的な販売価格は、基本的にメーカーが定める「メーカー希望小売価格(定価)」を上限として設定されます。
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流通構造が長くなる影響:中間業者が増える(多段階になる)ほど、各段階で利益が上乗せされるため、最終的な販売店の利益は減少し、エンドユーザーの購入価格も高くなります。
3. 流通構造におけるメーカーと商社の力関係
この業界の流通構造は強固に出来上がっており、簡単には変化しません。
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メーカーの力が強い場合
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多くの業界で、メーカーの力が非常に強いです。メーカーとのパイプを強固にするために、卸商社が積極的に在庫を持つ(場合によっては持たされる)ことがあります。
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メーカー側が強いため、メーカーが定めた販売価格や流通ルールを商社側が覆すことは困難です。
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商社・卸の力が強い場合
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ごく稀に、特定の商社がメーカーの商品をほぼすべて買い切り、その商社以外から商品を仕入れられない状態を作り出すことがあります。
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この場合、商社が価格決定権を持ち、市場での価格競争を防ぐ(価格を維持する)ことが可能になります。
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このように、商社の業務は既存顧客へのルート営業が中心であり、商品の流通はメーカー・卸商社・販売店から成る強固な構造の中で成り立っています。