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「うちの部署には関係ない」を防ぐ、全社展開に向けた業務システム導入前の地固め
新しい業務システムの導入プロジェクトは、選定や稟議書の作成が成功しても、その後の「社内への浸透」でつまずくことが少なくありません。
特に、直接的な利用者ではない間接部門や、業務フローが変わることに抵抗を持つ部署から「うちの部署には関係ない」という無関心や反発の声が上がると、全社展開は停滞します。これは、システム導入プロジェクトにおける最も一般的な失敗パターンの一つです。
この記事では、全社的なシステム導入を成功させるため、無関心な部門を巻き込み、導入前から地固めを行うための戦略的な3つのステップを解説します。
ステップ1:部門ごとに「個別のメリット」を明確化する
システム導入の目的を「全社的な効率化」という抽象的な言葉だけで終わらせてはいけません。各部門の代表者に会い、「その部門特有の課題がどう解決するか」という具体的なメリットを伝えます。
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部門 |
抽象的なメリット(NG) |
個別のメリット(OK) |
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営業部門 |
効率化につながる |
経費精算の手間が半減し、顧客対応の時間が増える(売上貢献)。 |
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経理部門 |
ペーパーレス化 |
請求書の突き合わせ作業がゼロになり、月次の締め処理が3日短縮する。 |
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情シス部門 |
DX推進 |
既存システムとの連携がスムーズになり、システム管理工数が20%削減する。 |
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経営層 |
業務改善 |
リアルタイムの原価データが取得可能になり、迅速な経営判断が可能になる。 |
地固めのポイント
「全社効率化」ではなく、「営業部長の抱える残業問題が解決する」「経理部長が最も嫌がる手作業がなくなる」といった、部門トップが抱える個人的なペインにフォーカスして説明することで、プロジェクトへの関心を一気に引き上げます。
ステップ2:全社導入の前に「パイロット部門」を選定する
全ての部門で一斉にシステムを切り替えるのは、混乱と反発の元です。まずは、システムを最も必要としている、あるいは新しいツールへの抵抗が少ない「理想的なユーザー部門(パイロット部門)」を選び、そこで成功体験を作り上げます。
1. パイロット部門の選定基準
- システム利用への意欲が高い: 新しいシステムを「面倒」と捉えず、「チャンス」と捉える部門。
- 業務フローが比較的シンプル: 複雑な例外処理が少ない部署から導入し、初期トラブルのリスクを抑える。
- 社内で影響力がある: その部門の成功が、他の部門にも「自分たちも導入したい」と思わせるような影響力を持つ部門であること。
2. 成功体験の「見える化」
パイロット運用が成功したら、その結果を必ず「全社への広報活動」に利用します。
- 「〇〇部門では、残業が〇〇時間減りました」という具体的な削減効果を社内報やイントラネットで発信。
- パイロット部門の担当者に「導入して良かった点」を語ってもらう座談会や発表会を開催する。
地固めのポイント
導入前に、「あのシステムは使えば本当に楽になるらしい」というポジティブな口コミを社内に拡散させることで、他の部門の心理的なハードルを下げ、スムーズな展開への下地を作ります。
ステップ3:「利用部門の代表」をプロジェクトチームに組み込む
最も有効な地固めの技術は、「導入を推進する側の人間」を増やすことです。システムを導入される側の部門代表を、プロジェクトの意思決定プロセスに巻き込みます。
1. プロジェクトへの参加と権限付与
- 「スーパーユーザー」の育成: 各部門から1〜2名のキーパーソンを選定し、「スーパーユーザー(またはチャンピオン)」としてプロジェクトチームに組み込み、初期設定やテスト段階から参加してもらいます。
- 「決定権」の付与: 彼らにシステムの細かな設定(例:部門の承認ルート、通知設定)に関する決定権の一部を付与します。これにより、「自分たちが決めたシステム」という意識が芽生え、導入後の定着を積極的にリードしてくれます。
2. 部門間の「縦割り」解消
プロジェクトチームを通じて、普段業務では関わらない部門間(例:営業と経理、開発とサポート)のメンバーに課題を共有させます。これにより、経理の業務が効率化すれば、それは営業のストレス軽減につながる、といった部門間の相互理解が深まり、システム導入を「全社的な共通課題」として認識できるようになります。
地固めのポイント
導入側からの「押し付け」ではなく、「利用部門自身が作り上げたシステム」という意識を醸成することが、導入後の組織的な抵抗を解消する最大のカギとなります。
まとめ:無関心は「情報不足」が生む
システム導入における「うちの部署には関係ない」という無関心は、実は「そのシステムが自分にどんなメリットをもたらすか」という情報不足から生まれています。
地道ですが、この3つのステップ—①個別メリットの明確化、②成功体験の可視化、③利用部門の巻き込み—を徹底することで、導入を「やらされ仕事」ではなく、「全社員にとってのメリット」に変えることができるでしょう。