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デジタル庁「デジタル庁職員による生成AIの利用実績」レポート解説

デジタル庁は2025年8月29日、職員向けの生成AI利用環境「源内(げんない)」の運用実績と、職員アンケートの結果をまとめた報告書を公表しました。本報告書は、人口減少と少子高齢化による担い手不足が深刻化する日本において、公共サービス維持のために不可欠とされる生成AIの行政現場における活用実態を明らかにするものです。

1. 「源内」の概要と導入の意義

1.1. 導入背景

デジタル庁は、政府における生成AIの利活用推進を担当し、利活用促進とリスク管理を表裏一体で進める役割を担っています。行政の効率化・省力化に生成AIの活用が有効であることが確認されていることから、政府が率先して安全・安心な活用を推進するための環境整備を進めています。

1.2. 「源内」の機能と特徴

「源内」は、デジタル庁が内製開発した職員向けの生成AI利用環境です。

  • 全職員が利用可能で、機密性2情報の取扱いが可能です。
  • 汎用AIアプリ(チャット、文章作成、要約など)に加え、行政実務を支援する複数の行政実務用AIアプリ(国会答弁検索AI、Lawsy(法制度調査支援AI)など)が提供されています。
  • 2025年8月時点では、AWS社の「Nova Lite」やAnthropic社の「Claude3 Haiku、Claude3.5 Sonnet」など複数のモデルから選択が可能でした。

2. 検証結果から見る利用実態

2025年5月から7月までの3か月間における利用実績は、生成AIの行政現場への浸透度を示すものとして注目されます。

2.1. 高い利用率と利用頻度

デジタル庁職員約1,200人中、約950人(全職員の約8割)が「源内」を利用し、生成AIの利用回数はのべ6万5,000回以上に達しました。これは、利用職員1人当たり平均70回の利用回数に相当し、業務での定期的利用が定着している状況が示されています。

項目

実績(2025年5月〜7月)

利用職員数

約950人(全職員の約8割)

総利用回数

65,032回以上

最多利用ユースケース

チャット(717人) 

2.2. 利用の「二極化」と職制による偏り

一方で、利用状況には二極化が見られました。

  • 3か月間で100回以上利用した職員が150人以上いたのに対し、
  • わずか5回未満の利用に留まる職員も170人に達しました。

また、職制上の段階別の分布では、若手職員民間専門人材が生成AIを多用する傾向にある一方で、課長級職員の半数は利用実績がゼロにとどまる結果が得られています。

3. 職員アンケートに見る評価と課題

職員アンケート(回答者110人)は、「源内」がもたらした効果と、今後の改善点を浮き彫りにしています。

3.1. 業務効率化への高い貢献

回答者の79.1%(87人)が業務効率化に「寄与している」と回答しており、今後の業務における必要性についても5点満点中平均4.2点(少数第2位繰上げ)と高い評価を得ています。

  • 具体的な効果:
    • 情報整理・検討支援: 検討する際の「壁打ち相手」として役立つ。
    • 法令調査: Lawsy(法令Deep Researchツール)により、知識不足の法令に関する調査の取っ掛かりを作るのに非常に有効。
    • 翻訳・校正: 文章の校正や技術文書の翻訳に役立ち、時間短縮につながった。

3.2. 今後の課題と改善要望

利用の定着と拡大に向けては、主に以下の課題が挙げられています。

  • LLMモデルの性能: 採用モデルが古く、チャットの回答品質に物足りなさを感じることがあるため、最新のモデルの利用や性能向上が強く望まれています。
  • 信頼性と透明性: 不正確な回答を正しい事実であるかのように述べる問題(ハルシネーション)や、回答の根拠・参照先(ソース情報)が表示されないため、透明性が欠けているという課題があります。
  • 入出力の制限: 処理できる文章の長さや、添付ファイルの容量(20MBや30MBなど)を拡大してほしいという要望があります。
  • 機能の使い分け: 用意されている多数の機能(窓口)が乱立している印象があり、どの機能を使えば最適か分かりづらいという指摘があります。

4. 今後の展開とAIエコシステムの形成

デジタル庁は、これらの検証実績と経験を政府及び地方公共団体に共有し、社会全体へのAI実装を促進する予定です。

  • 政府・地方公共団体への展開(移植):
    • 2026年1月以降(予定): 一部省庁と連携して「源内」の展開(移植)方法を検証・確立(リリース1.0)。
    • 2026年度以降(予定): 希望する行政機関への本格展開(移植)を進めます。

AIエコシステムの形成: 官民連携によるAIエコシステムを形成し、政府等の行政現場でのAI利用環境(ガバメントAI)の提供を通じてAI機能の高度化を推進していく方針です。

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