EC(電子商取引)における販売店とモールは、そのビジネスモデルや運営方法が大きく異なります。この違いを理解することは、EC事業を展開する上で非常に重要です。
| 区分 | 定義 | 実店舗の例 | ECサイトの例 |
| EC販売店 | 自社サイトで、一軒のお店として商品を販売する形態。 | 街の商店、ホームセンター(カインズ、コメリなど) | モノタロウ、ASKUL、MISUMIなど |
| ECモール | 複数の店舗が出展しているショッピングモール型のサイト。場所貸しのイメージ。 | イオンモール、ララポートなど | Amazon、楽天市場、Yahoo!ショッピングなど |
EC販売店は、実店舗で言えば一つの独立したお店であり、自社で集客から販売までを行います。
ECモールは、多くの店が集まる複合施設であり、出店企業がその場所を借りて商売をします。このため、「モノタロウに出店したい」という表現は誤りであり、「モノタロウに商品を卸したい」「楽天に出店したい」が正しい表現となります。
| 項目 | EC販売店 | ECモール |
| 集客 | 自社で行う必要がある。 | モール自体の集客力を利用できる。 |
| 競合 | サイト内での価格競争は発生しない(一つの商品に一つの価格)。 | 複数の店舗が同じ商品を扱うため、価格競争が激化しやすい。 |
| ランニングコスト | 比較的低い(通常取引における仕入れ・販売のみで、システム使用料など基本料金はかからないことが多い)。 | 高い(月々の基本使用料、売上に応じた手数料などがかかる)。 |
| 商品の扱い | 一つの商品に対し、一つの価格で販売される。仕入れ先は複数あり得る。 | 一つの商品を複数の店舗が異なる価格で販売できる。 |
販売店(モノタロウなど):商品掲載料や受注システム使用料などの基本料金はかからないことが多い。通常の商取引として、仕切価格で商品を卸す形となる。
モール(楽天など):毎月の基本使用料に加え、売れるごとの手数料が発生し、ランニングコストが高くなりがち。
ECモールでは、同じ商品でもA社が300円、B社が350円で販売するといった状況が起こるため、価格競争が不可避となり、結果として利益率が圧迫される可能性があります。
| サイト名 | 主な商品の入り口(元々の強み) | 特徴 |
| モノタロウ | 工具、MRO(工場や現場で使用する間接資材) | 工具を探しに来た顧客が、文具なども併せて購入するケースがある。 |
| ASKUL | 文具(文具通販としてスタート) | 文具を探しに来た顧客が、FA機器や工具なども併せて購入するケースがある。 |
| MISUMI | FA機器(ファクトリーオートメーション)、機械部品 | 元々は部品を組み合わせて納品するアセンブリー業者としてスタート。 |
💡 補足:商社との違い トラスコやアズワン(一部例外あり)は、モノタロウやアスクルなどの販売店へ商品を卸す商社であり、販売店とは流通構造上の立ち位置が異なります。販売店がエンドユーザーに最も近い末端です。
| サイト名 | 自社出店の有無 | 特徴 |
| 楽天市場 | ほぼ無し | 出店者が商品を出品する形式が基本。 |
| Amazon | 有り (Amazonプライム) | Amazon自身が仕入れを行い販売する(プライム)商品が存在する。このため、Amazonと出店者との間で価格競争や値上げ交渉が発生しやすい。 |
| Yahoo!ショッピング | 一部有り (ZOZO、PayPayモールなど) | 楽天と近いイメージ。近年は事業縮小傾向にある。 |
ランニングコストが高く価格競争が激化しやすいモールですが、出店を選ぶ主な理由は以下の通りです。
集客力の利用: 自社で多大なコストをかけて集客する必要がなく、モールが持つ既存の顧客層とトラフィックを利用できる。
早期の売上構築: 特に新規参入の場合、自社サイトで集客力を得るには時間がかかるため、モールに出店することで早期に販売チャネルを確立できる。
一方で、ブランドイメージやメッセージングに極度にこだわる企業は、モールも利用せず、自社サイトのみで展開し、SNSや口コミなどで集客を行う傾向があります。